ローマの革命児 天才画家カラヴァッジョの魅力に迫ろう

16世紀末から17世紀にかけて活躍したバロックの画家カラヴァッジョ。彼の生み出したドラマチックな作風は後の世代に大きな影響を与えました。その作風と波乱万丈な人生をみてみましょう。

mariko77kato政府公認フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子
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バロック時代の基礎を築いた風雲児 カラヴァッジョ

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17世紀ヨーロッパ。新大陸が見つかって1世紀が経ち、時代は中世から絶対王政への道をたどっていました。同時にルターがプロテスタントを立ち上げ、カトリックが権力の危機に陥った時代でもありました。そんな時に登場したのが画家のカラヴァッジョです。

暗い画面にスポットライトを当てたかのようなドラマチックな画風と、市井に生きる人たちをモデルに描いた作品は、当時の人たちに衝撃を与えました。その後のバロック絵画の基礎となった彼の画風ですが、彼のもう一つの魅力はその破天荒な人生。カラヴァッジョがたどった道を作品を通して見ていきましょう。

書籍名:もっと知りたいカラヴァッジョ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) 単行本
参考価格:1,944円

出生からローマまで 輝かしいキャリアと喧嘩三昧の日々

カラヴァッジョが生まれたのは1573年、イタリア北部ミラノの近くの小さな町でした。本名はミケランジェロ・メリージ、カラヴァッジョという名前は彼の生まれた町の名前です。ミラノで絵の修行をし、19歳ごろにはローマに移ります。

そこでカトリック教会の高位聖職者のデルモンテ枢機卿をパトロンに持つことになるのですが、カラヴァッジョはミラノにいる時から問題児でした。喧嘩をして相手を切りつけたり、レストランでお皿を投げつけたり、警官に石を投げて逮捕されたり、と話題がつきません。彼はそれまでの宗教画と異なり、彼の生きる世界を描きました。「女占い師」はその頃の作品。実際の当時の市民の様子が描かれており、この後活躍するフェルメールなどの風俗画につながっていきます。

まるで写真を見るような精密な描写 カラヴァッジョの写実性

カラヴァッジョが目指したのはリアリティ。自分とかけ離れた聖人ではなく、実際に生きる人々をモデルに描きました。そしてもう一つのリアリティが写実性です。ロンドンのナショナルギャラリーにある「エマオの晩餐」では果物が写真のような精密さで描かれています。ブドウは摘んだら果汁が出てきそうなほどのみずみずしさ。水差しは光を反射しています。キリストを囲む人物たちも、実際に街の居酒屋に座っていそうな人たちを描いたのがカラヴァッジョの目指したリアリティでした。

まるで舞台にスポットライトが当たったような傑作「聖マタイの召命」

問題を起こしつつも傑作を生み出し続けたカラヴァッジョ。27歳の時にサン・ルイージ・ディ・フランチェージ教会に3連作を納めます。その一枚がこの「聖マタイの召命」です。暗い画面にまるで舞台のスポットライトを当てたかのような光がマタイに差し込みます。黒い帽子をかぶって自分を指差しているのがマタイ。見ている方までその衝撃が伝わってきます。このドラマ性はバロック絵画の基礎となりました。

殺人を犯して逃亡の日々 ダヴィデと巨人ゴリアテに投影した自分の姿

枢機卿のバックアップもあり順調に見えたキャリアですが、ある日事件を起こしてしまいます。お金をかけてスポーツを楽しんでいたところ、ちょっとしたことから諍いが発生。殴り合いに発展し、気がつくとカラヴァッジョは相手の男を刺していました。人が死んだとなれば、それまでの事件とは大きさが違います。当時殺人罪は死刑を免れません。

カラヴァッジョはローマからナポリへと逃げます。逃亡生活の始まりです。そんな中で描いたのが「ダヴィデ」です。若いダヴィデが巨人のゴリアテを倒したという聖書に基づく話ですが、ここでカラヴァッジョはゴリアテの顔を自らの姿で描きました。

マルタ島への逃亡と天才の孤独な最期 「洗礼者ヨハネの斬首」

しかしナポリにも追っ手が迫ってきました。カラヴァッジョはさらに南下し、マルタ騎士団の領地であるマルタ島に向かいます。ここで大聖堂のために描いたのが「洗礼者ヨハネの斬首」です。キリストに洗礼を施したヨハネですが、時の王ヘロデに斬首に処されます。生々しい斬首のシーン、そしてそれを見つめる囚人たち、淡々と皿を置くサロメとまるで生きているかのような登場人物が描かれています。

この絵は噂になり、マルタの騎士として叙任されたカラヴァッジョですが、ローマでの殺人がばれ、またもやシチリア、そしてナポリへと逃亡します。やっと恩赦が出てローマに帰れる、というところでカラヴァッジョは熱病で一人孤独に亡くなります。享年37歳でした。

ドラマチックな世界観を楽しもう

波乱万丈な人生を生きたカラヴァッジョ。彼の写実性、ドラマチックな画風は彼の破天荒な人生があったからこそ。作品を通して彼の抑えきれない情熱を感じてください。

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この記事のライター

政府公認フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子

イタリア政府公認観光ガイド。本場イタリアからグルメ、ワイン、そしてイタリア男のカッコイイ生き様をお届けします。大手外資系企業で勤務中のある日「トスカーナの風に吹かれたい!」と思いつき、キャリアを捨ててイタリアに移住。フィレンツェ公認観光ガイドとして、大好きなルネサンス発祥の地フィレンツェで、現代にも通じる芸術、歴史、ライフスタイルを紹介しています。Twitterでほぼ毎日イタリアの「生」の情報を提供中。

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斉藤情報事務

信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。

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