琴線震わせる 岩井俊二の繊細かつ美しい芸術的作品で心をリフレッシュ
スタイリッシュを心がけている人も、人間である以上少なからず誰しも心の浮き沈みはあるもの。そうした際におすすめしたい、心が洗われる岩井俊二さんの作り出す繊細かつ美しい芸術的作品群をご紹介します。
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岩井俊二作品の特徴とは
とにかく繊細でアーティスティック、それでいて確立された世界観を表現した作品が多い印象です。「心の琴線震わせる」という表現がまさにぴったりな、強く、ときに激しく、そして優しく響く物語が引き込んでくれます。日常を忘れ、没頭できるようなものが多いので、気分が沈んだときや、悩んでいるとき、息詰まったときには、心を支える、リフレッシュするための強い味方となってくれます。また、1990年代のものと2000年~現在に至って作られている作品とでは、少し印象が異なってきます。そうした作品性の変遷なども見つめながら楽しむと、より岩井作品に深く没頭していけるでしょう。特に印象的な岩井作品を、リフレッシュが重要となる心の状態別にそれぞれおすすめしていきます。
岩井俊二さんについて
1963年1月24日生まれで、映画監督をはじめ、映像作家、脚本家、音楽家、小説家など多数の肩書きを持つ人物です。繊細で美しいアート的表現を多くもちいるので、アーティストといった印象も強いです。そうしたセンスは初期より認知されており、世に出始めた頃から「岩井美学」として高い評価を受けています。1993年の「if もしも~打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」というテレビドラマにおける日本映画監督協会新人賞をはじめ、1995年「undo」におけるベルリン国際映画祭フォーラム部門NETPAC賞・第4回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞、10以上もの賞に輝いた「Love Letter」など、国内外における数多くの受賞歴を誇ります。
打ちのめされた心を奮い立たせ立ち上がりたいときには
「スワロウテイル」 1996年9月14日公開
シンガーソングライターでもあるChara演じる主人公グリコが、金や薬で荒廃した世界を強く魅力的に生き抜く作品。恵まれない環境で育ちながらも、たくましく成功を掴み、愛を知り、仲間に囲まれながら駆け抜けていきます。波乱万丈を乗り越えた先、エンドロールでかかるエンディングテーマ「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」がとにかく心を掴んで離しません。どんな不幸に打ちひしがれていても、強くまっすぐであることで美しさが見出せる、そんなメッセージが沈んだ心を押し上げてくれます。
人間関係に疲れた心をリフレッシュしたいときには
「花とアリス」 2004年3月13日公開
鈴木杏演じる荒井花、そして蒼井優演じる有栖川徹子の二人が、天真爛漫に青春を送る可愛らしい作品。高校を舞台にした学生恋愛ストーリーですが、そこは岩井作品であり、ただただ可愛いだけの作品に留まりません。繊細で多感な思春期を送る二人の心模様を美しくおもしろく描いており、大人でも、そして男性でも引き付けられてならない世界観となっています。終盤で追い討ちをかけるようにビッグネームを登場させる、岩井作品らしい展開も必見。学校という狭い世界の中、どうでもいいようなことに翻弄されながらも魅力的に友情を築いていく二人の関係性に、日々の生々しい人間関係に疲れた心もリフレッシュできること必至です。
日常を忘れとにかくSF世界に没頭したいときには
「ウォーレスの人魚」 1997年9月発売
こちらは映像化されていない、小説作品。魅力的な作品なので、ファンは多いのではといった作品ですが、何せ壮大なSF世界が描かれているので、映像化は物理的に難しいのかもしれません。タイトルの通り、人魚をテーマにした物語です。多くを書くとネタばれになってしまいそうなので控えますが、とにかく圧巻は終盤の描写。人魚になって泳いだり、禁断の愛に溺れたり、独特の文章表現により、そんな感覚がビシビシと肌に伝わってきます。現実離れしていながらも、どこかリアリティも感じられてならないSF世界が、すっと引き込み疲れた日常を忘れさせてくれます。
奥深い上質なアート世界を堪能したいときには
「ヴァンパイア」 2012年9月15日公開
日本とアメリカ、カナダの三国における合作映画として製作・公開されたグローバルな一作。従来の岩井ワールドに、良い意味で日本らしからぬアート感覚もプラスされた、いち「芸術作品」として楽しめる完成度の高い映画です。吸血鬼という古めかしい題材をテーマにしていながら、これまでにないストーリー展開となっており、その意外性もまた見どころ。多くを外国人俳優が占める中、日本の女優、蒼井優も効果的に登場しており、邦画好きでも見やすいです。映画を見終わったあと、夢を見終わったあとのような不思議な気分に浸れます。芸術鑑賞が趣味だけど、忙しくてなかなか展覧会などへ足を運べない、そんな人も大きな満足感が味わえるような作り込まれた作品です。
一作知ればまたさらなる作品も知りたくなる中毒性
とにかく、唯一無二の芸術性を備えた作家、アーティストである岩井俊二さん。その世界には、他の作家の作品ではまず味わえないような、独特の魅力が感じられます。強く引き込んでくれる確立された世界観が、あなたを優しくいざないます。心のサプリメントが欲しい、そんな際にはぜひとも、その世界に触れてみてください。
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この記事のライター
関西→沖縄→関東~と旅して回るフリーランス。ライター歴は10年以上あり、あらゆる分野での執筆経験があります。その他、過去には写真や音楽に関するクリエイティブな活動もちらほら。経験を生かし、旬なもの、感性のアンテナに引っかかる話題など、ハイセンスなVOKKA読者皆様へ広くお届けさせていただければと意気込む次第。