半世紀経っても色あせない、ヘンリー・マンシーニの映画音楽の魅力
ヘンリー・マンシーニは1960年代から活躍した映画音楽の作曲家です。「ひまわり」など大ヒットした曲は多数です。半世紀経っても色あせない名曲を5つご紹介いたします。
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ヘンリー・マンシーニという映画音楽家
ヘンリー・マンシーニは1924年アメリカで生まれています。イタリア系のアメリカ人で、本名はエンリコ・ニコラ・マンチーニです。父親がフルートのクラシック音楽家であったことから幼少期から音楽教育の環境に恵まれていたようです。アメリカ随一の名門であるジュリアード音楽院で学び、後にユニバーサル映画に入社しました。1960年代から映画音楽を次々に作曲し、いずれもヒットしています。
1960年、1970年代は世界中で映画の全盛期で、歴史に残る名作はこの頃たくさん誕生しました。同時に俳優も名優が多く活躍し、映画音楽に関してもニーノ・ロータやエンニオ・モリコーネなどすばらしい音楽家が名曲を残しています。今回は、映画と音楽の両方がヒットした名曲を5つ後紹介します。
ティファニーで朝食を 1961年
「ティファニーで朝食を」はアメリカの有名な作家、トルーマン・カポーティが1958年に発表した小説です。題名の「ティファニー」はニューヨークの宝飾の一流ブランド店ですので、「朝食」という言葉に違和感を感じると思います。もちろんティファニーはレストランなどは営業していないので、映画の題名は「富裕層」のイメージを表現しているだけなのです。
主人公のオードリー・ヘップバーンがイブニングドレスでティファニーの前に立ち、ファーストフードのようなものを食べるシーンは一気に観客の目を釘付けにしました。カポーティは当初マリリン・モンローに主役(高級娼婦)の役をイメージして書いたといわれます。実際にはヘップバーンが主役となりましたが、結果として映画は成功したといえるでしょう。ストーリーは、高級娼婦となり「玉の輿」を夢見る女性が本物の恋を選ぶというものですが、よくまとまった内容で映画史に残る名作のひとつです。
音楽は、映画音楽の仕事の初期の頃であることもあり、かなり力を入れて作曲されたと想像できます。「ティファニーで朝食を」は彼の代表作のひとつといってもよいと思います。中でも、ヘップバーンが自身で歌った「ムーン・リバー」は大ヒットとなりました。哀愁のあるメロディと歌声は自然で、耳に心地よく、1度聴くとつい口ずさんでしまうほどです。アカデミー賞を受賞しています。
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酒とバラの日々 1962年
「酒とバラの日々」は、1962年に制作された映画です。この頃の世界は戦後から15年過ぎ、平和で経済的にも豊かになりました。外から見て何の不安や心配もない世の中でありながら、はっきりしない不安感や自堕落な性格から酒という快楽に溺れていく人もいたようです。この映画は自ら「アル中」になり幸せな生活を失っていく男女を描いています。
1960年代の映画はあまり現実的な表現はせず、どこか「作られた話」のような甘い終わり方をしているものが多いのですが、この映画もそういった雰囲気があります。しかし、内容とは裏腹にマンシーニの音楽はロマンチックで明るく、映画の内容というより音楽が大ヒットとなりました。アカデミー賞を受賞し、現代まで多くの人がアレンジをして演奏しつづける名曲です。
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ピンクの豹 1963年
「ピンクの豹」は後にいつくも続編が作られるほど大ヒットしました。映画は知らなくても、クルーゾー警部という名前は現在でも「コメディ」の役だとわかるほどです。イギリス人らしくトレンチコートに身を包み、することなすことが「ドジ」という外見とのギャップが観客を爆笑させます。元々主役は「泥棒」なのですが、準主役のクルーゾー警部が人気となり続編が次々に作られる結果となったのです。
警部役はイギリスの名優ピーター・セラーズが好演しています。「大泥棒の貴族」という主役には、やはりイギリスの名優であるデビット・ニーヴンが演じました。ピンクの豹とは、ピンクに光輝く巨大なダイヤモンドのことです。ある国の王女が所有するダイヤモンドを巡っての捕物が面白く描かれています。映画のオープニングのアニメのピンクの豹も単独でキャラクターとしてヒットしました。
誰でも楽しく観ることができるコメディの傑作です。マンシーニは、音楽を聴いただけで「泥棒」の「抜き足、差し足」を想像できるように独特のリズムで表現しています。半世紀を越えても演奏され続けている楽しい名曲となりました。
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シャレード 1963年
「シャレード」はサスペンス映画ですが、ロマンチックコメディの要素もあり、殺人がストーリーに含まれているのですが、何か深刻さというものがありません。最後にどんでん返しがあり、おしゃれなエンディングとなっています。主役のオードリー・ヘップバーンがジバンシーの服を着ていることから、ファッションも話題となりました。
相手役のケーリー・グラントはイギリス出身でアカデミー名誉賞を受賞するほどの名優です。マンシーニは、この映画でもロマンチック、サスペンスという雰囲気に合う音楽を提供しました。郷愁を感じるような、少し悲しい印象のメロディから悲劇を連想してしまいますが、ロマンチックな名曲です。
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ひまわり 1970年
「ひまわり」は、イタリア、フランス、旧ソ連の合作映画で、名作中の名作といえます。戦争で引き裂かれてしまう夫婦の悲劇を描いています。主役をイタリアの名女優ソフィア・ローレン、相手役をマルチェロ・マストロヤンニが演じました。ひまわりが地平線まで続くほどいっぱいに咲いた様子が映画のスクリーンに映し出され、一層哀しみを誘うという手法に驚かされる人は多いでしょう。
マンシーニは、ソフィア・ローレンが泣き崩れる映画の盛り上がりに合わせ、すばらしい音楽を書きました。この「ひまわり」の映画音楽は、彼の代表作といって間違いない名曲です。
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名曲は1960年代に作られた
いかがでしたでしょうか。ヘンリー・マンシーニは、1960年代から70年代にかけて代表作となる名曲を残しました。この頃の映画は意欲的、斬新で良くも悪くも自由な雰囲気があったように思います。豊かな世界が天真爛漫なコメディや、単純なストーリーであっても魅力的なサスペンス、ロマンチックで温か味のある映画を作らせたのかもしれません。ホッとした気分になりたいとき、半世紀前の映画の世界をどうぞ覗いてみてください。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。