映画音楽をじっくり聴いてみる!エンニオ・モリコーネの魅力・5作品
イタリアの映画音楽作曲家であるエンニオ・モリコーネは、1960年代から映画音楽の名作を数多く手がけてきました。イタリアの映画のみならず、世界中から作曲依頼のある巨匠です。ニュー・シネマ・パラダイスなど、心にじわじわと沁みこんでくる魅力的な5作品をご紹介いたします。
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アイキャッチ画像出典:cdn.pixabay.com
エンニオ・モリコーネという作曲家
エンニオ・モリコーネは1928年、イタリアに生まれました。作曲は、古い歴史ある名門のサンタ・チェチーリア音楽院で学んでいます。映画音楽は1960年代からで、初期の代表作は「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれるイタリアの西部劇です。この頃はアメリカのカウボーイスタイルに憧れがあったのかもしれませんが、アメリカやイタリアでは西部劇の映画は多数作られています。
アメリカではジョン・ウエイン、イタリアではジュリアーノ・ジェンマがガンマンを演じ、好評でした。勧善懲悪の映画は誰が見てもわかりやすく、戦争が終わり世の中も次第に安定してきたこともあり、世の人たちは「はっきりとした善悪」を求めていたのかもしれません。モリコーネ自身は、暴力シーンや流血を感じさせる映画を嫌悪しているようです。
しかし、彼はギャングを描いた「シシリアン」「狼の挽歌」、第二次大戦を描いたものや恋愛ものまでいろいろなタイプの作品を手がけています。日本の2003年NHK大河ドラマ「武蔵」のテーマ曲を作曲したことでも知られます。何度もアカデミーにノミネートされましたが受賞に至らなかったのですが、2016年に「ヘイトフルエイト」でアカデミー賞作曲賞をみごと受賞しました。
シシリアン 1969年作 フランス映画
シシリアンは、1969年のフランス映画でフランスのイケメン俳優アラン・ドロンと、名優ジャン・ギャバンによるシシリアンマフィアの話です。この頃の映画は、ギャングや日本のやくざ映画が多く製作されています。現在のように映画倫理がまだ整っていない時代でした。しかし、勧善懲悪のもので「悪者」と「ヒーロー」がはっきりと分かれ、ストーリーも現在の映画のように複雑ではなかったように思います。
「古き良き映画」とはいえないにしても単純明快であったことは確かではないでしょうか。シシリアンのストーリーですが、ギャング映画にはお定まりの銀行強盗や裏切りなどがあり、アラン・ドロンの結末は…。音楽は悲哀に満ち、残虐な殺し屋の非情さは感じさせず悲しい結末を予感させます。主旋律を特徴的な分散和音が装飾し、1度聴くと忘れられなくなるでしょう。
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ペイネ 愛の世界旅行 1974年 イタリア映画
フランスのイラストレーターのレイモン・ペイネによるアニメーションに、モリコーネは主題曲を作曲しました。ペイネは1908年生まれで、愛をテーマにした作品を数多く描いています。この映画は、戦後世界が好景気で平和に満たされていた時代を象徴するかのようです。ストーリーは、主人公の男女2人が天国の天使により、「愛の世界」を探して世界中を旅するというものです。
世界の国々の人々を面白おかしく表現しており、フランスやイタリアからみた世界観が垣間見えて興味深いものがあります。音楽は、印象的というより明るくハートフルで幸せな気分を表現しており、1970年代の高度成長期を彷彿とします。
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 1984年 イタリア・アメリカ映画
セルジオ・レオーネ監督の最後の作品となった映画で、現代から見ても高い評価を得ている作品です。ギャング映画といってしまうとそれまでですが、貧しい生まれの少年たちが禁酒法時代のアメリカを舞台に必死に這い上がろうとします。2人の男の友情を描いた作品ですが、悪の道での成功は簡単ではありません。裏切りや強盗などは「シシリアン」同様ですが、この映画は少年たちの時間を数段階に分けて早回しします。
35年後になり、不可解だったことがはっきりとするのですが、時間は2人の友情を変えてしまいます。壮大なストーリーと主役のロバート・デニーロが名演をしています。音楽は、大都会の人ごみの中にいながらの「寂寥感」を十分に感じ取れるような名曲です。かすれた「笛」の音が特徴的で哀愁を感じさせ、記憶に長く残るメロディではないでしょうか。
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アンタッチャブル 1987年 アメリカ映画
アンタッチャブルとは、「手を触れてはならない」「禁制の」という意味があります。この映画は、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ同様の禁酒法時代のアメリカを背景にしています。シカゴを舞台に、ギャングのボスである実在の人物アル・カポネとFBI捜査官エリオット・ネスをモデルに作られました。最初はアメリカのテレビドラマで、日本では1959年から放送されています。FBI捜査官ネスとギャングのカポネとの捕物です。
映画では、捜査官をケビン・コスナー、カポネをロバート・デ・ニーロが演じました。他に、007ジェイムズ・ボンド役で有名なショーン・コネリーが老齢の警官として味のある演技を披露しています。音楽はキレが良く、シシリアンにあるような悲哀は感じさせないスピード感のあるカッコよい音楽に仕上がっています。
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ニュー・シネマ・パラダイス 1988年 イタリア映画
この映画は、映画好きの人のために贈る映画といえるのではないでしょうか。子供時代から映画好きであった少年が、戦争で父親を失い悲劇に見舞われます。田舎の映画館で働きながら、古い名画が上映され不思議な感覚です。映画の中で、「観客が映画を観て感動する」といった「劇中劇」のような作品ですから、それを観ている私たちは自然と同調していくのです。なかなか上手い手法といえます。
映画は回想シーンから始まりますが、少年が大人になり映画を通じて過ぎ去っていった人たちや過去を思い、泣くシーンは感動的です。「現実は非現実の映画とは違い、過酷だ」と少年が慕った老人は言います。誰にでも当てはまる、人生と重なる「映画」、過ぎ去っていく人や物事を思い出させる感動の名画です。音楽は、モリコーネの作品の中でもっとも素晴しいもののひとつといえるでしょう。
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音楽発祥の国イタリア
イタリアは、クラシック音楽を勉強する人にとって「発祥の国」として知られます。南国のイタリアは、陽気で明るく食べ物にも恵まれているので、優れた芸術が生まれる素養があるのかもしれません。そのイタリアからエンリオ・モリコーネのような素晴しい映画音楽の作曲家が出たとしても、何も不思議はないのでしょう。映画は、その音楽があるからこそ作品に重厚さや価値が加算されるように思います。映画をご覧になるときは、ぜひ音楽にも耳を傾けてみてください。更に感動が生まれること間違いありません。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。