世界最速の自動車 新型ブガッティ・シロンの魅力【世界で一番高い車】
先日発表されたブガッティの新型シロンの魅力を徹底解説します。ブガッティ・ヴェイロンとの違いや世界最速と呼ばれている最高速度の秘密、一般人では手が届かない驚きの値段、エンジンの構造、馬力、想定される維持費まで徹底解説します。日本ではほぼ見かけることがない憧れの超高級車ブガッティの魅力を是非感じ取ってください。
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Bugatti Chiron:World Premiere
The Launch movie from the Geneva Motorshow 2016
それは走る宝石 エットーレ・ブガッティの意志を受け継ぐシロン
エクステリア
出典:response.jp
インテリア
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メータークラスター
スピードメーター
パドルシフト
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2016年2月29日、全世界に向けて公開されたブガッティのニューモデル・シロン。翌日から開催されたジュネーブ・モーターショーでワールドプレミアが行われ、その姿を人々の前に現しました。2005年に超絶スーパースポーツカーとしてデビューしたブガッティ・ヴェイロン。2015年にタイプ「グランスポーツ ヴィテッセ」の生産が終了すると共に、後継車にバトンタッチされることになりました。その後継車がシロン、基本的な構成を踏襲しながらも全く新しいモデルとして誕生しています。
エクステリアはブガッティを象徴する馬蹄型のフロントグリルから始まり、巻き起こる風のようなサイドビューを持つ他に類を見ない秀逸なデザインです。このエクステリアこそ名車「タイプ57SC Atlantic」から引き継がれたものであり、各部に1930年代のデザイン要素が取り込まれています。Aピラーから大きく弧を描くルーフは、サイドシルまで回り込みサークルを形成。インテリアにもこのモチーフがあしらわれます。
インテリアは筆舌に尽くしがたい優雅な仕立て。センタートンネルから大きく立ち上がるコンソールには、シフトノブと各種スイッチが配置されます。大きくEBのエンブレムがあしらわれたステアリングと、メータークラスターには500Kmまで刻まれたスピードメーターを中央にセット。スピードメーターの左側に各種車両情報を、右側にはナビゲーション画面が表示されます。アルミニウムとカーボン、そして本革が織り成す珠玉の空間です。
車名の由来は「ヴェイロン」と同様。かつてブガッティの「タイプ35」や「タイプ51」を駆り、多くのレースで勝利したレーサーのルイ・シロンから名付けられています。
ブガッティ・ヒストリー①
Type 2
1881年にイタリア・ミラノで芸術家の家に生まれたブガッティの創業者、エットーレ・ブガッティ。1898年には自転車メーカーで見習いになり、17才で3輪車(現在のトライクのような乗り物)にエンジンを搭載することに成功します。1901年にミラノで開催された国際展示会で、自身が制作した「タイプ2」を展示。フランス自動車クラブから賞を授与されました。
1902年、エットーレ・ブガッティは家族と共に、当時のドイツ領・アルザス地方のニーデルブロンに赴きます。ここで自動車の設計を始め、1903年には最初のレースカーを造り上げました。そして1909年に、自身の会社をアルザスのモールスハイムに設立したのです。
シロンの最高速度を味わうために必要なこと
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on the Speed Key
最高速が420Kmを上回るといわれるブガッティ・シロン。プログラミングされた走行モードは4パターンが用意されており「1.Lift 2.EB-Auto 3.Autobahn 4.Handling」となるようです。そしてスピードリミッターを解除することで380Kmの速度を出すことが可能。さらにその上のモードである「Top Speed」は専用の「Speed Key」でリミッターの解除が必要になり、その最高速度は420Kmに達するといわれています。
この「Top Speedモード」使用の条件は、全ホイールとタイヤの新品交換が前提。ちなみにヴェイロンの場合はタイヤ交換が工賃込みで約470万円、国産の高級車が買える金額です。この「Speed Key」ですが、2個目があるということで、これを解除することで得られる最高速は458Km若しくは463Kmに達するともいわれています。しかし380Kmはもとより、国内でこれだけの速度を出せる場所というのはサーキットでも難しいでしょう。
圧倒的ハイパワーを発揮するエンジンと冷却
Chiron:engine
製作:フォルクスワーゲン
形式:W型
シリンダー:16気筒
バルブ:4
排気量:7993㎤
ターボ:4基
最大出力:1500PS/6700rpm
最大トルク:163.2Kgf/2,000-6,000rpm
ミッドシップにレイアウトされ、圧倒的なパワーを発揮するフォルクスワーゲン製のW型16気筒エンジン。最高出力は1500PSに達するということで、ヴェイロンのハイパワーモデル「16.4 スーパースポーツ」の1200PSを大きく凌駕しています。また最大トルクも153.0Kgfから163.2Kgfにアップ、強烈な加速が可能です。
基本的なエンジン構成はヴェイロンと同じですが、4基あるタービンは大型化。カーボンファイバー製のインレット・マニフォールドをはじめ、チタン製のエキゾースト・システムなどを採用することによってさらに出力を高めています。
このエンジンが発生する熱量は膨大なもので、冷却には15台のラジエターがセットされています。エアインテークとなるドアサイドのサークル形状など、全て効率よく空気を取り入れるための構造。その美しい形は機能に裏打ちされたものです。
フロントボンネットには小さいながらもラゲッジスペースを用意。EBの刻印とシロンの刺繍が施された専用のバッグがセットされます。
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リヤウィングは速度に応じて自動的にリフトアップ、最高速からのブレ―キング時には垂直になりエアブレーキの役割を果たします。
ヒストリーオブ・ザ・ブガッティ➁
Type 10
Type 30
1910年、排気量1.3Lの4気筒エンジンを搭載した「タイプ10」を発表。1911年にはフランスグランプリに参戦し、2位というリザルトを残しています。1912年に「タイプ18」をラインオフ、5.0Lの4気筒エンジンはこの当時で既に100PSのハイパワー。速度は時速160Kmを記録したと伝わっています。1914年には「タイプ13ブレシア」を発表、このモデルは様々な派生モデルを生み出し、1926年までに「タイプ15」から「タイプ23」が製造されました。
1915年から航空機用エンジンも手掛けるようになり、従業員も1000人を越えます。1920年には「ル・マングランプリ」に参戦し見事に優勝。翌年に「タイプ28」を試作、搭載された3.0Lの8気筒エンジンは数々の特許を取得しています。1922年「タイプ29/30」を発表、1922年のストラスブールグランプリではフィアットに続く2位を獲得しました。同年ブガッティで最初のツーリングカーとなる「タイプ30」をリリースします。
シロンの車両データ
Chiron:dimension
全長:4544mm
全幅:2038mm
全高:1212mm
ホイールベース:2711mm
重量:1995Kg
トランスミッション:7速DSG
デュアルクラッチ
駆動方式:AWD
ヴェイロンより一回り大きくなったボディを持つシロン。シャシーはレースカー同様の剛性を発揮するフルカーボンの構造を採用、このシャシー単体ではヴェイロンより約16Kgほど軽量化されているようです。そして全幅は2.0mを超えたワイド&ローなスタイル。徹底した軽量化が図られていますが、車重は2.0t近くになります。
超高出力を受け止めるトランスミッションは、7速DSGと呼ばれるデュアルクラッチを採用したもの。このトランスミッションを介して4輪に駆動が伝達されます。車高も4つのプログラミングモード「1.Lift 2.EB-Auto 3.Autobahn 4.Handling」によって変化。高速走行に合わせて車高が低くなり、cd値も下がります。
タイヤサイズ:フロント285/30R 20
リヤ355/25R 21
ミシュラン製ランフラットタイヤ
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ブレーキキャリパー:フロント8ピストン仕様
リヤ6ピストン仕様
ディスクローター:セラミックカーボン
強烈なパワーを直接路面に伝えるタイヤは、ミシュラン製の専用品でランフラットタイヤです。時速300Kmから僅か280mほどでストップできる強力なブレーキシステムを持ち、前後ともセラミックカーボン製のディスクローターを採用。キャリパーはフロントが8ピストンでチタン製ピストン、リヤが6ピストンになります。
ヒストリーオブ・ザ・ブガッティ③
Type 35
Type 40
Type 41 Royale
ブガッティの黄金時代を築いたといわれる名車「タイプ35」は1924年に生産を開始、通算で2000回以上のレースで勝利したといわれています。この「タイプ35」で有名なレース「タルガ・フローリオ」に参戦、シチリア島で開催されたこのレースで見事に優勝しました。1926年にはブガッティで最も成功したモデルといわれる「タイプ40」をリリース。リーズナブルな価格設定もあり約800台が製造されました。
同年再び「タルガ・フローリオ」で優勝、そしてブガッティを象徴する名車「ロワイヤル」が誕生します。12.7Lの8気筒エンジンは300PSを発揮、全てに贅を尽くした設えで当時のブガッティで最も高価なモデルでした。翌年は「タルガ・フローリオ」でも優勝を飾り、同時に「タイプ44」も発表しています。1929年には「モナコ・グランプリ」で初優勝、同年初めてのオーナーズクラブがイギリスで設立されました。
パフォーマンスデータや購入方法・維持費など
Chiron:performance date
0-100km/h加速時間:2.5秒未満
0-200km/h加速時間:6.5秒未満
0-300km/h加速時間:13.6秒以下
100-0km制動距離:31.4m
200-0km制動距離:125m
300-0Km制動距離:275m
MAX Speed:420Km
MAX Speed:458Km?463Km?
圧倒的なパフォーマンスを魅せるブガッティ・シロン。全ての数値が桁違いです。最高速についてもまだ憶測が流れている状態で、実際には条件が揃えば463Km以上出るのではないかとも噂されています。ヴェイロンの最高速は「16.4 スーパースポーツ」の434.211km/hでギネス記録。これを大きく上回る速度です。
ブガッティ・シロンの推定価格は約240万ユーロということで、レートによって異なりますが日本円で約3億円程度のようです。また販売台数は限定されており、現状では約500台とのこと。これは派生モデルや限定モデルの登場によって若干増える可能性があり、現状ではまずTバースタイルのロードスターが登場するのではないかと予想されています。
購入や維持費
推定価格:約240万ユーロ(車両本体)
販売台数:約500台
燃費:通常走行約3.0km/L
最高速約0.8Km/L
購入方法はヴェイロンと同様で、ブガッティ・オトモビルの日本における正規代理店であるニコル・レーシング・ジャパンにおいて事前審査が行われます。この審査に通過した後ブガッティ・オトモビルが認可すると、フランスへのファーストクラス航空券が同封された招待状が送られてくるようです。ちなみにヴェイロンの購入時は審査を通過した時点で予約金として5000万円の支払いが必要でした。
ブガッティ・オトモビル本社があるフランス・モールスハイムに到着したら、シートの形状やサイズ・位置などを計測し試乗が行われるようです。その後ボディカラーや内装色・オプションなど各種の仕様を決定しますが、これは日本でも行えます。そして納車までに残金を支払い、デリバリーを待つという流れです。購入者にはブガッティ・オーナーズクラブへの入会資格が与えられ、400Kmオーバーを目指すレースなどのイベントに参加できます。
購入に際しては日本国内で課せられる各種税金と自賠責保険の支払いが必要。任意保険への加入も必要になりますが、そもそもこの金額を支払えるオーナーですので、保険には入らないという選択肢もあるようです。ヴェイロンの場合は単純計算でも保険料が日本円で年額600万円位になるとの情報がありました。もちろんこの金額は保険会社の審査をクリヤした場合であり、保険内容によっても大きく異なります。
維持費について現状ではまだ日本へのデリバリーの実績がないため、ヴェイロンのデータを参考にします。燃料費や税金・保険料や整備費など諸々掛かる諸経費から推定すると、年間約2700万円ほどになるとの試算もありました。
1、燃料費:通常走行でも僅か3.0Kmの高燃費。燃料タンクの容量が100Lといわれていますので、ハイオクガソリンを150円で計算すると1回の給油で15,000円、これで300Km走れます。
2、整備費用:1年に1回行われる定期点検の費用が大体150万円~200万円程度かかります。
3、タイヤ交換費用:ブガッティでは4000Km走行でタイヤを、16000Km走行でタイヤ&ホイールの交換を推奨しているとのこと。この交換は日本国内では行えないためフランスに送りますが、費用は450万円ほどかかるようです。
オーナー以外で一般的に知られているのは上記のような情報でした。
ヒストリーオブ・ザ・ブガッティ④
Type 55 Jean Bugatti Roadster
Type 57SC Atlantic
1931年にファクトリーチームとして「ルマン・24時間レース」に参戦。同年レース車両と同様のエンジンを搭載した美しいカブリオレ「タイプ55」がデビューします。1934年、遂に伝説の名車「タイプ57」が登場、クーペやコンバーチブルなど5種類のボディタイプが作成されました。そして1936年「タイプ57SC Atlantic」がデビュー、このモデルこそシロンがオマージュしたといわれる名車です。
2017年3月にデリバリーを開始、”アトリエ”から3台のシロンが中東に向けて送り出されました。
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世界一高い価格、世界一速い速度。どれをとっても他に比類なき性能と優雅さを併せ持つブガッティ・シロン。ブガッティ・ヴェイロンは映画監督の北野武や、俳優のレオナルド・ディカプリオをはじめ著名人が所有していることでも有名です。さて、ブガッティ・シロンをドライブできるのは誰なのでしょう。
※ 掲載内容は2017年3月現在のものです(各種データには参考値が含まれます)
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この記事のライター
信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。