初スピンオフ『24:レガシー』ついに発進!10のキーワードで斬る大人気海外ドラマ『24』の醍醐味
全世界で大ヒットし、各国で社会現象を巻き起こしたアメリカのテレビドラマ『24』。2017年2月から、初のスピンオフ『24:レガシー』の放映が日本でも開始されています。数多くの視聴者を魅了してきたシリーズですが、一体何がそれほどまでに人々を夢中にさせたのでしょうか。10のキーワードで、『24』の醍醐味を語っていきます。
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海外ドラマブームの先駆けとなった驚愕の『24』シリーズ
2001年の9.11同時多発テロ直後にアメリカで始まった『24』は、瞬く間に視聴者の度肝を抜きました。既存のテレビドラマとは一線を画した、驚愕の展開、設定、アクション、ビジュアルだったからです。日本では、2003年にレンタルビデオでその人気に火が点き、リリース日の朝にビデオ店の前にファンが列を成すという珍しい現象も各地で見られました。シリーズ累計3億回のレンタル回数を見ても、どれだけ国内で一世を風靡していたかがわかります。あれから約15年が経過し、全8シリーズに加え、2時間の特別編『リデンプション』と12話構成の『リブ・アナザー・デイ』が放送されてきましたが、今でも『24』は熱いファンに支持され続けています。
そして、2017年2月、シリーズ初のスピンオフ『24:レガシー』がついに始動! 果たして、今度はどんな切り口で私たちを興奮のるつぼへと巻き込んでくれるのでしょうか。ここでは、『24』シリーズの魅力を改めて検証していきます。
出典:www.hulu.jp
世界を席巻した海外ドラマの金字塔
【シーズン1~8 字幕・吹替版 配信中】キーファー・サザーランド扮するジャック・バウアーがヒーローの大人気テレビドラマ。全シーズンで共通するのはリアルタイムなストーリー展開。1日の出来事が、1話1時間の24話構成で描かれている。
デジタルカウンターと電子音に胸が高鳴る!
1)リアルタイム
「事件はリアルタイムで進行する」という冒頭のジャック・バウアーの言葉どおり、『24』はドラマの1分が実際の1分を描いています。つまり、1話=1時間、24話で24時間=1日の出来事となっているのです。エピソードの冒頭と最後、CMの前後には、デジタル時計の数字が表示され、1秒ごとに時が刻まれていきますが、CMの間も時間が進んでおり、まさにリアルタイムであることを実感! 電子音とともに示されるデジタル数字は、まるで刻一刻と移り変わる時限タイマーのようで、観ている側の緊張も高まり、ドラマ内の時間を共有している気にさせられるのです。回を重ねて観続けていると、パブロフの犬のように、あの電子音を聞くだけで、胸を躍らせてしまうとか……。
この男、取り扱い注意!! 制御不能な主人公
2)ジャック・バウアー
『24』の顔であるジャック・バウアーは、テロリスト対策ユニットCTUのエリート捜査官として、颯爽とドラマに登場しました。しかし、“結果オーライ”な彼のやり方は、ときに無謀で、狂気に満ちており、法の遵守など、どこ吹く風。味方であろうと、己の行く手を阻もうとする者には容赦しません。国家の救世主となりながらも、同時に犯罪者にもなるという、皮肉な展開にも。過去に米陸軍の特殊部隊に所属していたため、銃火器の扱い、各種格闘術はもちろんのこと、様々な戦略や駆け引きに長け、いとも簡単に万能拷問&殺戮マシーンになり得るのです。「俺がルールだ!」と言わんばかりのジャックには、仲間たちも視聴者も振り回されっ放し。手強い敵の出方ももちろん気になりますが、ジャックの一挙一動にも全編通して気を揉むことになります。
「正義=俺」「ルール=俺」「常識=俺」がジャック三原則
体力と精神力の限界に挑む衝撃のストーリー
3)アドレナリン
人が危険や恐怖、興奮などで激しいストレスにさらされた場合、体内ではアドレナリンが分泌されます。この物質は“闘争か逃走か(fight-or-flight)ホルモン”と呼ばれ、人体がストレスに対処できるよう、心拍数と血圧を上げ、瞳孔を開き、感覚器官の感度を増大させる一方で痛覚を麻痺させるのです。『24』の中では、これでもかと危機が連続してジャックや仲間たちの身に降りかかり、緊迫と戦慄のドラマが繰り広げられていきます。彼らはもちろんアドレナリン全開で窮地を脱しようとしますが、そのスリリングな展開たるや、観ている側にも容赦なくアドレナリン放出を迫ります。ドラマを見終わった後、あまりの衝撃にしばらく興奮状態が続き、その後、どっと疲れが襲ってくる──。それは、ジャックたちの体験を共有した証拠なのです。
ジャックだけじゃない! クセ者揃いの登場人物
4)バイプレイヤー
国家の有事に迅速に対応し、恐ろしいテロリストたちを次々に排除していくジャック・バウアーは、完全無欠の超人並みの活躍を見せますが、全て彼ひとりの手柄というわけではありません。そこには陰の功労者となる味方が存在し、ときには彼の足を引っ張るライバルも出現します。敵味方を問わず、『24』には個性的な脇役が数多く登場し、ジャックの行動を左右したかと思うと、今度はジャックに翻弄されます。ジャックに並ぶ人気を誇るのが、優秀なCTUの分析官クロエ・オブライエン。シリーズを重ねるごとに、ジャックとは運命共同体のようになり、彼女の人生も様変わりしていきます。他にも、一度は番組から退場しても、意外な形で戻ってくる登場人物もいて、その度に、ファンは一喜一憂させられるのです。決して、シンプルな「正義vs悪」の構図にならないのが、『24』の特徴のひとつ。バイプレイヤーたちは、そこにひと役もふた役も買っています。
出典:24.wikia.com
仏頂面はクロエのトレードマーク
次回まで待てない! 身悶えするようなラスト
5)クリフハンガー
毎回、怒涛の展開でこれでもかとアドレナリンを放出させられるだけでなく、非常に気になるところで番組が終わり、視聴者は続きがどうなるのか知りたくて身をよじるようなジリジリした思いに駆られました。まさに、『24』は、クリフハンガーの連続。しかも、各エピソードだけでなく、各シーズンのラストもそうなのですから、気持ちが宙ぶらりんになったファンは、たまったものではありません。ゆえに、シーズン8で制作が終了した後、2014年に『リブ・アナザー・デイ』でジャックが戻ってきたときの『24』ファンの歓迎ぶりは相当なものでした。しかし、『リブ・アナザー・デイ』の最終回から、再び視聴者もジャックも時が止まったまま。今回のスピンオフ『レガシー』は、ファンにとって、ちょっとした砂漠のオアシス的存在になっていますが、これほどの渇望感を味わえるということは、それだけ観る者を夢中にさせるドラマだということに他なりません。
ひとつのエピソードを見終わった途端、すぐに次の展開を知りたくて気持ちは宙ぶらりん
同時進行で多面的に描かれる人間模様
6)マルチスクリーン
『24』の別の特徴として、“マルチスクリーン”が挙げられるでしょう。モニターの画面が複数に分かれ、それぞれに同時刻での違った場所、違った人々の様子が数秒映し出されるだけなのですが、ここにこそ、このドラマの醍醐味があります。常にリアルタイムでドラマが進むため、並行する複数の人物の動向が時間にさかのぼって描かれることはありません。通常のテレビドラマによくある、過去の回想シーンは、『24』にはほとんどないのです。私たちが暮らす現実世界と同様に、画面に映し出されるのは“今の瞬間”。その臨場感ゆえに、醸し出される緊迫した雰囲気は他の作品をはるかにしのぎます。マルチスクリーンで別の登場人物の様子を垣間見せることで、今、何が同時進行しているかを視聴者に一瞬で把握させ、複雑に絡み合った物語を共有させるのです。
同時刻の複数の登場人物の様子がマルチスクリーンで示される
時代を先読みするシナリオに愕然!
7)フォーサイト
『24』の全米での放映開始は、2001年11月6日。その約2ヶ月前には、9.11同時多発テロが発生し、アメリカが大きな不安に包まれていた時期でした。『24』は国家とテロとの凄絶な戦いが軸になっているドラマですが、企画が持ち上がって制作が始まったのは、9.11テロが起きるずっと前のことでした。まるで現実を予見したかの内容に、アメリカ国民は驚きを隠せませんでした。それだけではありません。オバマ大統領誕生の前に、すでにドラマ内では黒人大統領が登場していましたし、イスラム国のような組織の台頭なども何年も前に描かれていました。過去のシーズンを見直すと、今、現実になっている世界をいかに『24』が先取りしていたかを思い知らされ、背筋が寒くなります。
『24』は黒人大統領の誕生を予見していたのか
脅威の時計の針は止まらない
8)タイムリミット
「世界終末時計」なるものをご存知ですか? 1947年に創設された、核戦争などで人類が絶滅するのを午前0時とし、あとどのくらい猶予があるのかを象徴的に表わす時計のことです。設けられた当時は、“あと7分”の余裕がありましたが、ソ連が崩壊した1991年には、“17分前”まで針が戻されました。現在は、ドナルド・トランプ大統領が核の根絶や地球温暖化対策に乗り気でないことを理由に終末時計の針が進んで“残り2分半”となり、ますます不穏な世の中になってきた感は拭えません。『24』では、それを分刻みで意識させられます。作品内でも「The clock is ticking(時間は刻一刻と過ぎていく)」という表現が出てきますが、人々はテロや核攻撃の脅威にさらされ続け、ジャックは時間との勝負を余儀なくされます。時限装置との格闘をはじめ、限られた時間で奔走する彼の姿に、どうしても目が釘づけになってしまいます。
究極の四面楚歌状態の雨あられ
9)デッドエンド
気がつけば、いつもジャックはピンチ状態。敵に取り囲まれ、味方に裏切られ、家族にそっぽを向かれ、激しい拷問を受け、撃たれ、刺され、転落し、爆風で吹き飛ばされ、毒を喰らって瀕死の重傷を負い、麻薬漬けになり、逮捕され、脱走し、指名手配犯になり、人格が破綻し、人生の全てを捨て……と、彼の苦境を挙げ出すとキリがありません。さらに、窮地に追い込まれるのは何もジャックに限ったことではなく、アメリカ国民が危機また危機に襲われます。爆弾テロ、核兵器テロ、細菌兵器テロ、毒ガステロ、ハイジャック、カージャック、誘拐、監禁、銃撃、爆撃……と、まさに犯罪と暴力のオンパレード。しかし、これでもかと繰り返し四面楚歌状態になったとしても、ジャックは決して負けません。過程はどうであれ(この結果に至る“過程”が筆舌に尽くしがたい凄まじさなのですが)、彼は結果的に国家を救うのですから──。
毎回、極限まで追い詰められるジャック
事態を収束させるまでの24時間、彼もあなたも眠れない
10)スリープレス
『24』は、ある1日の24時間を描くドラマ(12時間のときもあります)だということは、すでにお話ししましたが、ひとつのシーズンを見終わり、振り返ってみると、とても24時間の出来事とは思えないほど、様々な事態が発生し続けています。国家は最大の危機を向かえ、登場人物たちは不眠不休で対処にあたることになります。そしてエピソードを見れば見るほど、怒涛のアクションや予想外の展開に、視聴者は興奮のあまり覚醒し、事の行方が気になって眠れなくなる……という図式“『24』スパイラル”が生まれるのです。今夜は1話だけ見ようと思っていたのに、気がつくと、5話続けて、5時間も見ていた……なんていうことも容易に起こりえます。過去には、1シーズンどころか、4シーズン分72話連続で鑑賞するイベントも行われた『24』。このドラマは、視聴者を眠らないジャック・バウアーの道連れにしてしまう中毒性があるのです。
ジャック・バウアー不在の新たなる挑戦『24:レガシー』
「『24』シリーズはジャック・バウアーなしでは成り立たない」と、誰もが思っていました。しかし、新たに始動したスピンオフ『24:レガシー』では、ジャックを演じてきたキーファー・サザーランドはキャストではなく、制作総指揮という裏方に回っています。「ジャックのいない『24』なんて……」と、嘆くファンもいるでしょうが、実際にフタを開けてみると、そこには、『24』でしか味わえない、いつもの興奮、緊迫感、スリルに満ちた世界が視聴者を待ち構えていました。
新たなヒーローは、エリック・カーター。イエメンでテロリスト首謀者抹殺をやり遂げた陸軍特殊部隊のエリートですが、無事に終えたはずの彼の任務が、予想もつかない事態を生んでいきます。このスピンオフには、過去のシリーズで馴染みの深いキャラクターも登場しますが、新しい顔となる面々で、どこまで『24』ファンの度肝を抜かしてくれるか、どんな伝説を作ってくれるのか、ますます目が離せそうもありません。
『24』シリーズ初のスピンオフ作品に期待が高まる
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この記事のライター
数々のミステリー、アクション小説、伝記本、映画雑誌のインタビュー記事、人気ゲーム関連の邦訳を手がけるキャリア20年の翻訳家。小学2年で読書の悦びに目覚めた本の虫で、読書と翻訳作業で培った知識は、映画、海外ドラマのショウビズ関係はもとより、生物学、医学から欧米の文化、政治、歴史、犯罪、銃器、ミリタリーなど広範囲に及ぶ。日々の生活で「一日一善、一日一爆笑、一日一感動」を心がけ、読者を笑顔にし、読み手の胸に染み入る文章を目指す。米国フロリダ州オーランド在住で、映画、海外ドラマ、アメリカンカルチャーなどの旬な情報も随時発信。