着るロボットでハイテク長者!?日本人の富豪ランキング番外編(2015年Forbes誌発表)
長者番付は金額の多寡を競うものでもありますが、よりこのランキングから教訓を得るためには、ニューカマーの顔ぶれを見る必要があります。2014年は三名の社長が新しくランクインしましたが、共通するのはITやゲームで一山当てるのではなく、志に基づき長い時間をかけてビジネスを成功させていることです。彼らの志に学びましょう。
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ニューカマーは山海氏、鈴木氏、篠原氏の三名
今回のニューカマーはサイバーダイン創業者の山海嘉之氏、ポーラ・オルビス・ホールディングスの鈴木郷史氏、テンプスタッフの篠原欣子氏の3名です。順位としては31位、46位、48位と後半に位置していますが、一発屋的な気質は乏しく、長い時間をかけて成功を勝ち取ったいることが見受けられます。それぞれ順番に見て行きましょう。
31位 山海嘉之 1340億(11.2億ドル)
着るロボットであるHALを産み出したサイバーダインの創業者、山海氏は31位にランクインしました。最初の資金調達で無議決権方式での第三者割当増資をして5500万ドルを集めたことが話題となりました。上場時には普通株式と別の議決権の異なる種類株式を発行しており、結果として山海氏は議決権の86.4%を握っています。
筑波大学大学院教授である山海氏が社長を務めるサイバーダインは、2004年に創業。以来日本が直面する深刻な高齢化・医療費負担について取り組んできました。2014年の3月にはIPOに踏み切り、一時公開価格の4倍の値をつけるなど非常に人気が殺到。これにより山海氏は番付にランクインを果たしました。
その山海氏が筑波大学で教鞭を取りながら20年に渡る研究開発に勤しんだ結果産み出されたのが、サイボーグ型ロボットである「HAL」(Hybrid Assistive Limb)です。足腰が弱った高齢者や、病気の後遺症で歩行が困難な人が着るロボットであるHALを身に着けることで歩行を容易にします。また介護施設や工場に導入することで、人を助け起こしたり荷物の積み降ろしの際の負担を軽減します。
まだ市場規模は小さいものの、介護ロボの市場は年間1億4000万ドルの負担が今後10年で10億ドルまで成長する見込みがあると言われています。
同社の取り組みが急速に高齢化が進む日本の社会問題を解決する切り札となるのか、非常に興味深いところです。
46位 篠原欣子 816億(6.8億ドル)
人材派遣会社であるテンプスタッフの創業者、篠原氏が46位にランクイン。今回の番付では、相続ではなく自力で財を気付き長者番付に名乗りを上げた唯一の女性です。
篠原氏は経歴がユニークな方です。高校卒業後に三菱重工に勤めた後32歳でスイス、イギリスに留学し語学、秘書学を勉強。37歳でオーストラリアに渡り、現地マーケティング会社「ピーエーエスエー社」に社長秘書として入社。39歳で帰国し、人材派遣会社「テンプスタッフ株式会社」を設立しました。
2008年にはピープルスタッフ株式会社と経営統合し、テンプホールディングズ株式会社を設立しました。こうした篠原氏の辣腕は米国「フォーチュン」誌による「世界最強の女性経営者」に2000年より9年連続で選出されています。
篠原氏は留学時の経験を活かし、帰国後に人材派遣会社を設立。当時は日本に外資系企業が参入したばかりであり、六本木界隈の外資系企業を中心に、パンフレットを配って歩いて営業をして仕事を取っていたようです。
こうしてテンプグループは、多様な就業機会や人材活用を社会に提案することで、雇用創造に取り組み、柔軟な働き方を望む方々と、その力を活かしたい企業、双方の支持を追い風に、創業から41年を迎えています。日本も「ホワイトカラーエグゼンプション」など雇用形態が変化する中で、こうした先見性を持った働き方を提供してきた篠原氏の活躍は働く女性の大きな支えとなるのではないでしょうか。
48位 鈴木郷史 780億円(6.5億ドル)
化粧品・ファッション会社のCEOである鈴木氏が48位にランクイン。現在のオーガニック化粧品に注力する舵取りが成功し、ポーラ・オルビスは成長路線に乗ることが出来ました。
ポーラは会社の成り立ちから見て行きましょう。
ポーラの原点は80年以上前、たった一人のために作ったクリームだったようです。創業者である鈴木忍が、手が荒れてしまった妻のために独学でクリームを作り、使い方を説明しながら、お客さまを一軒一軒訪問して歩いたことが、ポーラの化粧品開発と販売の始まりです。
こうした「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」という創業理念は、独自の販売力を誇る「ポーラレディ」と呼ばれる販売員達を産み出すことになります。
また独自の研究力も魅力のようです。ポーラレディが顧客のもとを訪れ、肌データを収集。その細胞を分析して、分析に基づいて処方化された化粧品をお客さまのもとへお届けする。こうしたポーラレディによるカウンセリング販売と、ポーラ化成工業による分析技術や処方化技術を結びつける独自のモデルが構築され、ポーラ強固な販売力とリピート率を誇っています。
折しも、女性の活躍が進むと同時にライフスタイルが多様化し、一人ひとりの女性の美しさに応える化粧品が求められている時代になりました。こうしたプロセスは、時代の要請に応えるための手法でもあり、成功は必然的だったと言えるのかもしれません。
また鈴木氏は美術にも造形のある家系で、養父の常司氏はポーラ美術館を設立し印象派や日本の芸術家作品を収集しています。本人もポーラ美術振興財団の理知長を勤めています。
どのくらい増やしたか、ではなくどういう意図で増やしたかを注目したい
こうしたニューカマーの動向を見ると、金融緩和や資本市場価格の変動により番付が変わるような体勢ではないことが分かります。彼らの富は日本を変えたいという信念の結晶であり、我々もそこから学ぶことは多いにあります。いくら増えたか、ではなくどういう意図で増えていったのか、その過程にこそ注目したいところです。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。