個人資産2兆円!?日本人の富豪ランキングTOP30(2015年Forbes誌発表)
アベノミクスが開始して3年目の2014年は国際的な金融緩和や原油価格の暴落など資本市場は大きな動乱の1年となりました。盛んに行われたM&AやIPOもこうした変動の影響を受け、長者番付もそれに伴った推移をしています。教養や雑学として、長者番付の順位はビジネスの情勢を知ることに繋がります。ランク上位から順番に紹介します。
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2014年は株価上昇で番付に変動が
2014年はM&AやIPO、相続で取得した株式の価格が、アベノミクスを始めとした金融緩和の影響により大幅に上昇し、長者番付のランキングもそれに伴って推移しました。またインターネット通販、SNS、ゲーム関連会社などIT系の社長は3人ランクインしており、年齢も37〜9と非常に近似しているところも注目です。一方、こうした相場動向に左右された以上は、来年はこの番付を維持できる保証もありません。地に足のついたビジネスモデルを展開できているかが分かれ目となるでしょう。
それでは順番にランキングを見て行きましょう。
なお、為替レートは1ドル=120円で計算されています。
1位 柳井正+家族 2兆5320億円(211億ドル)
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井氏が昨年度1位の孫正義氏を破り、堂々の1位にランクイン。
コア事業であるユニクロの海外展開が順調に推移し、2014年には世界全体で売り上げが65%上昇しました。柳井氏の資産も3600億円以上増加しています。現在では長男と次男が後継者として目されており、彼らの1000億を超える資産も加えて計上されています。
2020年までに世界最大のアパレルメーカーを目指す同社の動きにも注目です。
2位 孫正義 1兆6680億円(139億ドル)
昨年度1位の孫氏は2位へ転落。
ソフトバンクは中国のインターネットショッピング大手アリババの株式を32%保有しています。2014年の上場時には一旦多額の利益を手にするも、アリババの株式が20%程値下がりして低調に推移したため孫氏の資産は昨年と比べて7200億円(60億ドル)下落しています。
第二のアリババを探しインドに投資を進めている同社の動きに注目です。
3位 佐治信忠+親族 1兆3080億(109億ドル)
サントリーホールディングス会長の佐治氏は昨年と同様の3位をキープ。
昨年サントリーホールディングスのCEOを辞任し、116年に渡る同族経営の歴史を捨て社外からCEOを抜擢したことは国内外を問わず話題になりました。また1兆9200億を投じたバーボンウイスキーで有名な米国ビーム社買収も耳目を集めました。
4位 三木谷浩史 1兆2600億円(105億ドル)
楽天会長兼社長の三木谷氏は昨年と同様4位をキープ。
楽天はM&Aによる事業展開が注目を集めました。2014年9月には会員制アフィリエイトモールを展開するEbatesを1200億円で買収、配車サービスのUberの競合であるLyftに360億円投資しています。また最近は渋谷区に24億円の住居を建築していることも話題となりました。
5位 滝崎武光 1兆560億円(88億ドル)
グローバル展開しているセンサー機器メーカーのキーエンス創業者である滝崎氏は昨年と同様の5位をキープ。2015年3月期決算は営業利益が前年比34.5%増の1757億円に。キーエンス自体も営業力の高い会社として有名です。創業者の滝崎氏は創業40周年で代表を退き、会長職に就きました。
6位 高原慶一朗 6480億円(54億ドル)
紙おむつ、生理用品など健康用品メーカー・ユニチャームの創業者である高原氏は順位を上げて6位に。現在は息子の豪久氏が同社社長を務ています。アジア市場における高齢化や人口増加が追い風となり、中国・インドネシアが成長マーケットの鍵を握る市場となっています。8期連続で過去最高の営業利益を更新するなど、今後の展開が楽しみです。
7位 韓昌祐+家族 5880億円(49億ドル)
日本最大のパチンコメーカーマルハンの創業者である韓氏も順位を上げ7位に。
現在はパチンコのみならず、ボウリングや映画館、ゴルフ場も展開しています。また祖国の韓国・永宗島に建設が予定されている、ホテルやショッピングセンターを備えたエンターテイメントプロジェクト・ドリームアイランドにも投資をしています。今後のプロジェクトの展開に注目です。
8位 毒島邦夫+家族 5280億円(44億ドル)
パチンコなどゲーム機器メーカーのSANKYOの創業者である毒島氏は順位を下げ8位に。
家族の投資ファンドの株式は同社の代表を務める息子の秀行氏に譲っています。2015年3月期は全体で増収となるも、パチンコ機器の総利益が減少し、営業利益が57.2%減の120億円と苦戦の模様です。
8位 森章+家族 4560億円(38億ドル)
不動産会社・森ビル創業者の三男。森トラストは丸の内トラストタワー、シャングリラホテル東京を含め88の賃貸ビルと30のホテルを運営しています。また2020年東京オリンピックに向けてホテルのアップグレードに取り組んでいます。
直近では1300億円を投じて取得した目黒雅叙園をたった5ヶ月で売却し、130億円の利益を出したことが話題になりました。
10位 伊藤雅俊 4560億円(38億ドル)
イトーヨーカ堂の創設者であり、セブン&アイHDの会長である伊藤氏は順位を上げ10位にランクイン。
セブン&アイホールディングスとして2020年までに女性管理職の割合を30%までに引き上げる政府の目標に同意したことが話題となりました。主力のセブンイレブン・ジャパンが好調で4期連続最高益を記録し、破竹の勢いを見せています。
11位 三木正浩 4200億円(35億ドル)
ディスカウントシューズショップのABCマートを創業者である三木氏は順位を上げ11位に。韓国、台湾をアジアの成長マーケットとしてターゲットにして事業を拡大しています。2012年に買収したアメリカのシューズメーカー「ラクロス」、2014年に買収した「ホワイトブーツ」は日本での販売も好調です。
12位 永森重信 3720億円(31億ドル)
世界一のモーターメーカーであり日本電産の会長兼社長である永森氏は順位を上げて12位に。
同社の事業はPC周りから自動車、家電に装着されるコンピュータ用モーターの供給に軸足を移してきています。日本の名物社長と言われる永森氏は、技術革新の先を捉えることを意識した先進技術の買収を積極的に行っています。現在の投資先はロボット高額が多いようです。
13位 森佳子 3360億円(28億ドル)
2012年に亡くなった森ビルの会長・社長である森稔の妻である森佳子氏が13位にランクイン。相続財産に含まれる六本木ヒルズ、上海ワールドフィナンシャルセンターは一等地のため、不動産価格の上昇に伴い資産価値が拡大しました。
14位 重田康光 2520億円(21億ドル)
情報通信系商社である光通信の創業者である重田氏は順位を落とし14位に。アベノミクスの恩恵を受け株価が上昇したことから、2013年12月より利益確定のため所有株を売却しています。15年3月期はLED販売など新規事業が伸びて増収した一方、顧客獲得のための経費がかさみ最終減益となりました。
光通信も営業力が高いことで有名な会社ですが、重田社長はまだ50歳と上位陣と比してもかなりの若手です。今後の動向が注目されます。
15位 木下兄弟創業者一族 2460億円(20.5億ドル)
消費者金融大手のアコムの創業者一族である木下恭輔、盛好、勝宏が15位にランクイン。現在の会長兼社長は盛好氏です。アコムは2009年に三菱UFJフィナンシャルグループの子会社になりました。また勝宏氏が代表のマルイトは国内にホテル、リゾート事業を展開しています。
16位 安田隆夫 2400億(20億ドル)
ディスカウントストア、ドン・キホーテの会長兼社長である安田氏は16位にランクイン。
インバウンドの対応として外国人観光客向けの接客、通貨の対応を始めたことが注目を集めました。株価も去年で60%ほど上昇し、安田氏の資産も58%上昇しました。尚同氏は6月30日で退任を発表しています。65歳と比較的若い年齢だけに、今後の活動が注目されます。
17位 似鳥昭雄 2280億円(19億ドル)
家具チェーン最大手のニトリHDの創創業者兼会長の似鳥氏は17位に順位を上げました。
堅調な売り上げにより資産は62%増え、番付は昨年度の31位から14位ランクアップ。海外展開にも力を入れており、アメリカでは「Aki-Home」を5店舗オープンしています。
18位 馬場功淳 2040億円(17億ドル)
スマホ向けゲーム制作会社のコロプラの創業者兼社長である馬場氏はランクダウンし18位へ。馬場氏は37歳と上位陣の中では再若手です。元々は副業として始めたゲーム制作は同氏が30歳のころ法人化されたものですが、現在は白猫プロジェクトを始めとした人気ゲームで多くのユーザーを獲得し課金収入が拡大しています。
19位 大塚実・裕司 1980億円(16.5億ドル)
大塚商会の創業者一家である大塚実・裕司氏が19位にランクイン。実氏は1961年に創業し、コピー機やソフトウェアなどのOA機器の有力商社として成長させて、2001年に退任。現在は92歳です。息子の裕司氏は横浜銀行やリコーを経て大塚商会に入社し現在社長に就任しています。
20位 金沢兄弟 1920億円(16億ドル)
パチンコメーカーのSANYOの創業者一族である金沢氏は20位にランクアップ。兄弟の名前が要求、全求、信求とユニークなのは有名な話です。パチンコ機器は海をテーマにした機種がヒットしており、現在は沖縄の珊瑚保全活動にも従事しています。
21位 武井博子+親族 1884億円(15.7億ドル)
消費者金融の武富士の創業者一族である武井氏は21位へランクダウン。2010年に博子氏は息子らと共に経営破綻した武富士の創業者である亡夫・保雄から資産を相続しました。同社は一族が相続株を売却した後に破綻し、過払い金の変換を巡って訴訟が起きたことは記憶に新しい出来事です。
22位 多田兄弟 1860億円(15.5億ドル)
ドラッグストア大手のサンドラッグ創業者一族の多田氏は22位へランクアップ。直樹、高志氏の兄弟は創業者である父・幸正氏から株式を相続。昨年同社の株価も38%上昇し資産も増加しました。
23位 前澤友作 1824億円(15.2億ドル)
日本最大級の通販サイトであるゾゾタウンを展開するスタートトゥデイ社長の前澤氏は23位へランクアップ。ゾゾタウンの利用者は年間350万人を超え、2015年3月期での営業利益も前期比21.8%増と大幅に拡大しました。前澤氏も39歳とコロプラの馬場氏に次ぐ若さであり、今後の展開が楽しみな人物の一人です。
24位 笠原健治 1812億円(15.1億ドル)
ミクシィの会長である笠原氏は24位にランクイン。実に4年ぶりの長者番付への返り咲きを果たしました。過去に収集したデータを活用し、利益率の高いデート、通販、ゲームに軸足を移した戦略が功を奏し、株価も350%上昇。笠原氏も39歳と若手であり、今後もこの長者番付を維持できるかが注目です。
25位 多田勝美 1800億円(15億ドル)
賃貸住宅大手の大東建託創業者である多田氏は25位にランクダウン。2011年には同氏は持ち株を売却し、経営から身を引いています。現在は不動産開発のダイショウの社長としてオーストラリアでの高級オフィスビルの建設に注力しています。
26位 杉浦広一+家族 1680億円(14億ドル)
ドラッグストア大手の「スギホールディングス」の創業者兼会長の杉浦氏が26位へランクアップ。利益率の高い処方箋調剤事業が功を奏し、15年2月期の連結決算で当期純利益128億円と過去最高を更新しています。
27位 松井千鶴子・道夫 1560億円(13億ドル)
松井証券の創業者である松井房吉の娘である松井千鶴子氏と、婿養子の道夫氏が27位へランクイン。1931年に創業された当初は伝統的な証券会社でしたが、95年にオンライン取引に軸足を移して以来、他社と激しい価格競争を繰り広げています。
28位 岡田和生+家族 1500億円(12.5億ドル)
パチンコ機器メーカーであるユニバーサルエンターテイメント社の会長である岡田氏は28位へランクダウン。2014年12月にフィリピンで賄賂関係の訴訟は取り下げられ、法的な問題が終息したことが話題になりました。
29位 福武總一郎 1380億円(11.5億ドル)
ベネッセホールディングスの会長である福武氏が29位にランクダウン。個人情報漏洩で話題になりました。同社今後は2020年東京五輪があること、小学5年生から英語が必修になる可能性に備えて英語の授業の充実化を狙っており、今後の展開に注目です。
30位 田中良和 1360億円(11.4億ドル)
グリーの創業者兼社長である田中氏は30位へ転落。同社はゲーム関連の業績が落ち込む中、ニュースアプリなどの展開による多角化で勝機を見いだそうとしています。田中氏も38歳と番付内では若手に入ります。番付を維持できるか、今後の展開に注目です。
来年は相場動向に左右されない存在が上位に?
今回は金融緩和と密接に連動した番付となりましたが、こうした相場動向に左右された以上は、来年はこの番付を維持できる保証もありません。地に足のついたビジネスモデルを展開できているかが分かれ目となるでしょう。またここ数年の上位にに君臨してきたIT、ゲーム会社の社長も番付にはニューカマーはいませんでした。
こうしたランキングを知っておくと、ニュースや時勢を見る視線も変わることでしょう。今年の日本のビジネスモデルに注目です。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。