浅田次郎のこれだけ読んでおけば外さない小説7作
浅田次郎の作風には賛否両論出る場合があります。その理由に彼が巧すぎるからというのもあるようです。しかし、読み手が誰であったとしても確実に感銘を受ける作品がいくつか存在します。
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1. 蒼穹の昴
浅田次郎が「これを書くために作家になった」と言ったほどの渾身の名作ですが、読んだ人は誰もが納得したでしょう。清という国の成立から繁栄、衰亡にいたる過程を背景に、糞拾いを生業とする男子春児(チュンル)と、科挙の受験に赴く静海梁家の次男梁文秀が、それぞれ末期の清朝廷に仕えるところから壮大なドラマが展開されていきます。この壮大過ぎるストーリーが果たして生きている間に映画化される日が来るだろうか。そう思わされてしまうほどの超長編作品です。
2. 珍妃の井戸
蒼穹の昴のスピンオフ的な作品で、「その後」を垣間見ることのできる作品です。義和団事変の混乱の中、西太后に殺されたとされる光緒皇帝が寵愛した珍妃、その彼女の死をいろいろな人物とのインタビューを通して、解き明かしていきます。単体作品としても読めるが、蒼穹の昴を読み終わったしまった後の余韻を噛みしめるために読むのがいいかもしれません。
3. 中原の虹
蒼穹の昴の正式な続編といえるでしょう。蒼穹の昴の主要キャラクターたちのその後や、蒼穹の昴では描かれなかったストーリーが描かれています。これを読んで全てが終わったのだなと、寂しさすら覚えますが、一読の価値ありです。
4. 壬生義士伝
号泣すること間違いなしの一作です。主君に仕え、主君のための命であるから、そのために死んでこそ武士というのが常識となっていた時代に、家族のため、金のために生きた男の話です。脱藩し、新選組に入隊、永倉新八と互角に渡り合い剣術指南役になった吉村貫一郎は金にがめつく、守銭奴と新選組内でも軽蔑されます。「死にたぐねえから人を斬るのす」と言い、それでも武士か、と罵られますが、最後には彼こそが「誠の武士」だったのではないかと思わされます。「義」というものを深く考えさせられる名作です。映画化もされドラマ化もされましたが、映画の方が原作に忠実で、中井貴一演じる吉村貫一郎が原作のイメージとずれがなく、とてもいい作品です。
5. シェエラザード
昭和20年、嵐の台湾沖で、2,300人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸(みろくまる)。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々に謎の死をとげていきます。戦争当時の「弥勒丸」を巡るドラマと、現代の海底に沈んでいる「弥勒丸」を引き揚げに関わる人々のドラマが並行してスリリングに進んでいきます。そして、様々な人の思いがそれぞれの状況において錯綜する中で、「弥勒丸」は時代を超え、誇りを持って美しく生きることの意味を人々に問い掛けてきます。蒼穹の昴や壬生義士伝のような重厚感はないですが、楽しめる一作です。
6. 日輪の遺産
終戦直前、敗戦を悟った帝国陸軍が祖国復興のための軍資金としてマッカーサー将軍から奪った時価200兆円にもなる財宝を秘密裏に隠匿した。それから五十年、1人の老人から手帳を託された男がその財宝の秘密に迫っていく。財宝を隠匿するために駆り出された女生徒たち、密命を受けた軍人など、財宝に関わり、それを守るために生き、死んでいった人々の姿を描いた力作。浅田次郎が「若書き」と評する初期作品だが、人気の高い一作です。
7. 地下鉄に乗って
世界的に有名な企業の創設者である父から反発し家を飛び出していた主人公がある夜、永田町駅の地下鉄の階段を登ると、30年前の世界にたどり着いていました。地下鉄で現代と過去を行き来し、兄の自殺の真実、反抗し続けてきた父の真の姿などを目撃していく。本作は、2000年にミュージカルとして舞台化され、2006年には映画化及び、アナザーストーリーがテレビドラマ化されています。
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