【床の上の芸術品】生活の彩りにいつかは欲しいペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯は古い歴史と伝統を誇る、イランで織られる手織りの絨毯です。『暮らしの手帖』の元編集長である松浦弥太郎氏もとりこにし、「僕の愛する一流品」にも選出されていました。今回はそんなペルシャ絨毯の魅力を解説したいと思います。
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ペルシャ絨毯とは?
ペルシャ絨毯とは、その名がイラン周辺が伝統的にペルシャと呼ばれていたことに由来することからもわかるように、イラン周辺で生産されている手織りの絨毯のことです。ペルシャ文化を代表する美術工芸品で、その歴史は、なんと紀元前にまでさかのぼることができる歴史と伝統を持つ絨毯なのです。
ペルシャ絨毯の魅力とは?
出典:pixabay.com
ペルシャ絨毯の魅力というと、文様に見られる芸術性だけが語られることが多いですが、そうではありません。たしかにペルシャ絨毯の文様は見事の一言であり、それも大きな魅力ですが、ペルシャ絨毯はそのような芸術性を持ちながらも、生活用品として機能性と耐久性を持ち合わせており、私たちの生活の中に溶け込むことこそペルシャ絨毯が他の美術工芸品と違うところなのです。生活の中に美しさを取り込めること、これこそがペルシャ絨毯の大きな魅力と言えます。
さらに、ペルシャ絨毯はウールや綿、シルクなどの天然繊維を動植物や鉱物から作られる天然染料で染め上げ、密に織られているので、絨毯として踏まれれば踏まれるほど、独特の深い色合いへと変化し、より一層美しくなっていきます。こういったエイジングが楽しめるのもペルシャ絨毯の魅力の一つです。
何を持ってペルシャ絨毯というのか?
ペルシャ絨毯は百貨店や大型の家具店など、多くの場所で取り扱いがあり、値段もピンからキリまで様々です。それでは一体何を持ってペルシャ絨毯というのでしょうか。
まずペルシャ絨毯とは、先述の通り、イラン周辺で生産される手織りの絨毯を意味します。つまり「イラン」と「手織り」、この2要件を満たさない限り、厳密にはペルシャ絨毯とはいえないのです。それでは日本で流通しているペルシャ絨毯はどうでしょうか。まず産地で多いのが、中国、ついでベルギーです。この時点でもはやペルシャ絨毯ではないことがお分かりいただけるでしょう。そして運よくイラン製のものを見つけたとしてもそれが機械織りであればペルシャ絨毯とはいえません。しかし、国内で流通しているペルシャ絨毯の多くはこういったペルシャ絨毯「風」のものなのです。
なぜ本物にこだわるべきか?
そもそもペルシャ絨毯は手織りですので、製作に非常に時間がかかります。イラン周辺にある大きな工房であっても年間に1000枚織れればいいところなのです。それを世界中の人々が求めるわけですから、国内の流通量が少ないのうなずけるでしょう。しかしそれでもペルシャ絨毯は、模倣品ではなく本物にこだわるべきです。なぜなら、本物でなければペルシャ絨毯の魅力は存分に味わえないからです。ペルシャ絨毯の魅力である文様。これは全てがオリジナルであり、それを製作するのには高い技術が必要です。そしてその技術は長い年月ペルシャ地方で受け継がれてきたものであり、一朝一夕で真似できるものではありません。
さらにペルシャ絨毯は天然繊維を天然染料で染め上げるので、使用される糸には当然染めムラがあります。機械織りは均一に織ってしまうのでこれらの染めムラが柄の美しさを損なってしまいます。しかし熟練した職人たちはそれらの染めムラを織りのテンションでうまく文様の中に溶け込ませます。機械織りでは決して再現することのできない「味」がそこにはあるのです。
ペルシャ絨毯の代表的な文様
宮廷画家が描いたデザインをベースにしているとも言われるペルシャ絨毯の文様。しかし1枚として同じ文様がないのがペルシャ絨毯の特徴でもあります。しかし全てがオリジナルと言っても、ある程度の代表的な文様があり、それにアレンジを加えているので、自分のお気に入りのペルシャ絨毯をチョイスするためにも、代表的なペルシャ絨毯の文様を知っておきましょう。
メダリオン
もっとも一般的なデザインです。中心部にメダリオンと呼ばれる大きな模様が織られたタイプです。四隅に統一の文様が織られている場合はメダリオンコーナーと呼ばれます。
オーバーオール
画像のようにメダリオンがない総柄のタイプをオーバーオールと呼びます。
ジオメトリック
その名のとおり幾何学模様が織られたタイプです。このタイプはあまり一般的ではないのでなかなか目にすることは出来ませんが、ヴィンテージのペルシャ絨毯など息を呑むような美しさがあります。
ピクチャ
絵や景色をそのまま絨毯にしたタイプです。あまりペルシャ絨毯っぽくないタイプですので人とは違ったペルシャ絨毯が欲しいという方にオススメです。
ペルシャ絨毯のお手入れは?
せっかくのペルシャ絨毯。いいエイジングで長持ちさせたいものです。そのためにはしっかりとしたお手入れが欠かせません。
普段のお手入れ
出典:pixabay.com
「お手入れが必要」と書きましたが、そこまで神経質にお手入れをしなくてはいけないものではありません。必要なのは定期的な掃除機かけと年2回程度雑巾で拭くことだけです。
やはりホコリが溜まると発色がくすんしまいますし、虫食いの原因にもなります。ですので週1~2回は掃除機をかけましょう。このとき注意して欲しいのが絨毯の毛の流れに逆らわないこと。ごしごしと掃除機をかけると色がその部分だけ落ちてしまいます。
さらには年2回ほど固く絞った雑巾で、毛の流れに沿って絨毯を拭きます。これで足の裏からでる油などをふき取り、きれいな発色を保つことが出来ます。
5~10年に1回はプロに頼んでクリーニング
普段のお手入れをしっかりしていても、どうしても足の裏からでる油は除去しきれません。そういった除去できない油は色合いを変化させていく良い一面もあるのですが、素材がウールなどの天然繊維ですので、油が付着したまま放置しておくとどうしても生地が傷みます。ですので汚れの有無にかかわらず5~10年に1回は専門業者にクリーニングをお願いしましょう。
生活に溶け込む美しさ
手入れをすればそれこそ100年でも使い続けることができるペルシャ絨毯。孫末代まで受け継がれる美しい絨毯。男のロマンといっても過言ではないアイテムです。そんなロマンと美しさが詰まったペルシャ絨毯、いつかは手に入れたいですね。
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この記事のライター
クラシカルなメンズファッションの着こなし、おすすめのアイテムを中心に記事を制作していきます。