幻のピアニスト！1968年からのエリザベート王妃音楽コンクール

ロシアのピアニストの亡命の選択

世界のコンクールで1位のピアニストの出身国を見ていくと、圧倒的にロシア出身の人やモスクワ音楽院で学んだ人が多いことに気がつきます。ただ、現在世界的なピアニストとして活躍しているかどうかは、「亡命」しているか否かということも影響しているようです。

ロシアに留まり音楽家として生きていくことの難しさは、はかり知れませんが、亡命という思い切った方法をやり遂げても「その後」が判然としないピアニストもるのです。コンクールで上位という成績であっても、「運、不運」が音楽家としての人生も左右するということがわかります。今回は、1968年の1位であるエカテリーナ・ノヴィツカヤという女性がその人といえます。

1968年 1位 エカテリーナ・ノヴィツカヤ

1968年開催では、1位を18歳の少女が満場一致で受賞したと伝えられます。ノヴィツカヤは1951年ロシア生まれです。モスクワ音楽院でアシュケナージと同じ師であるオボーリンに師事しました。天才少女として知られる彼女は、孤児院出身だったそうですが、幼少時に音楽の才能を見出され専門教育を受ける機会を得ました。

エリザベートコンクールの受賞後は旧ソ連の許可でレコードを何枚か出しています。プロコフィエフ、スクリャービンなどロシアのものを中心に素晴らしい演奏だということです。現在は原盤はかなり貴重なもので、高値で取引されています。幻のピアニストとしての知名度がマニアの間でありますが、ベルギー人との結婚後、国際的な演奏活動はなく、まったく情報がありません。過去の中では、プロコフィエフの演奏が特に素晴らしく、定評があります。　

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9位 エリザベート･レオンスカヤ

9位のレオンスカヤは1945年グルジア生まれです。子供の頃からピアニストとして活動していたという才女で、モスクワ音楽院で研鑽を積んだ後の受賞となりました。独奏のみではなく、ボロディン弦楽四重奏団など、室内楽との協演も長いようです。ピアニストとして華々しく派手に活躍しているというより、家庭の手料理をイメージするような温かみがあります。

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11位 フランソワ･デュシャーブル

11位のデュシャーブルは、1952年フランス生まれです。コンクールでの順位は高くはありませんが、フランスの実力派ピアニストといえます。フランスでラヴェルなど名高い音楽家も卒業生である「パリ音楽院」でピアノ科主席という経歴の持ち主です。レパートリーは広く、ショパンやリスト、シューマンなどのロマン派、ベートーベンなど古典派、そして母国の作曲家ラヴェル、プーランクなどの演奏には定評があります。

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1972年 1位 ヴァレリー・アファナシエフ

1972年開催での1位は1947年ロシア生まれのアファナシエフです。モスクワ音楽院でロシアを代表するピアニストのエミール・ギレリスに師事しました。受賞後は亡命し、国際的なピアニストとして活躍しています。かなり個性的な演奏スタイルや曲の解釈で「好き嫌い」がはっきりと分かれるタイプのピアニストではないでしょうか。レパートリーは広くはなく、ブラームス、シューベルト、ベートーベンというドイツ音楽が中心といえます。

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7位 エマニュアル・アックス

7位のエマニュエル・アックスは1949年生まれのポーランド系アメリカ人です。子供の頃はロシア、ポーランドといろいろな国で過ごしています。ピアノの基礎は父親に学んだあとクラシックの本場で学習する機会があったのではないかと推測されます。

現代のピアニストのように「テンポの速さを競う」のではなく美しい音色でしっとりと聴かせるスタイルです。レパートリーは独奏曲はあまり広くはなく、室内楽との協奏やオーケストラの協奏曲、現代曲などを取り入れています。

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9位 シプリアン・カツァリス

9位のカツァリスは1951年ギリシャ系フランス人として生まれました。フランスの「モスクワ音楽院」同等のパリ音楽院を卒業しています。フランスだけではなく世界的なピアニストとして活躍しており、国内外で様々な賞を受賞しました。

日本では、1993年にNHKの「ショパンを弾く」という番組で講師をするなど、後進の指導にも力を入れていることがわかります。人間的な温かみのある指導法が印象的でした。ピアニストのお手本のような演奏です。メロディーを美しく歌わせると同時に内声部から引き出す旋律を際立たせる手法は、「ショパンの弾き方はこうであったのではないか」と感じさせます。

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受賞後のピアニストの「その後」

いかがでしたでしょうか。エリザベート王妃国際音楽コンクールの1968年から1972年のピアニストを順位に関係なく、特徴的な人や活躍している人などをご紹介しました。彼らは人生も個性的なら、演奏も個性的といえるかもしれません。

また、順位とピアニストとしての成功は何も関係性がないことがわかります。コンクールの挑戦者たちは、その記録に名前を残した瞬間から、わたしたちに「その後」の人生ドラマを見せてくれることになるのです。